温室効果ガス削減目標各国比較

改めて各国は温室効果ガスの削減についてどのような目標を掲げ、直近の達成状況はどうなっているのか、簡単にまとめると以下のとおりだった。(目標の参考:Nationally Determined Contributions Registry | UNFCCC)

国名削減目標今世紀中頃に向けた目標達成状況
アメリカ2030年までに温室効果ガスのネット排出量を50-52%削減(2005年比)2050年までにネット温室効果ガス排出量をゼロにする2021年の同国の温室効果ガス実質排出量はCO2換算で55.9億トンで2005年比17%下回っている
中国GDP当たりのCO2排出量を2030年までに65%(2005年比)削減2060年までにカーボンニュートラル達成2021年の中国全国の単位GDP当たりCO2排出量は2005年比50.3%減(中国生態環境部公表)
インドGDP当たりの排出量を2030年までに45%(2005年比)削減2070年までにネットゼロ達成2021年の単位GDP当たりCO2排出量は2005年比約20%減
ロシア2030年までに温室効果ガス排出量30%削減(1990年比)2060年までにカーボンニュートラル達成2021年の温室効果ガス排出量は1990年比で30.4%減となっており2030年の削減目標を達成している
EU2030年までに温室効果ガス排出量少なくとも55%削減(1990年比)2050年までにネット温室効果ガス排出量をゼロにする2021年の温室効果ガス排出量は1990年比で30.4%減
日本2030年までに温室効果ガス排出量46%削減(2013年比)2050年までにネット温室効果ガス排出量をゼロにする2021年の温室効果ガス排出量は2013年比で20.3%減

<アメリカ>

アメリカは2020年の実質排出量は52.2億トンだったが、コロナ禍明けの経済活動増加により2021年は55.9億トンに増加し、目標達成という点では後退した。2022年の排出量もさらに増加したとの試算結果も出ている。(Preliminary US Greenhouse Gas Emissions Estimates for 2022 | Rhodium Group (rhg.com)) また、例えば2023年3月発表の2023年版年次エネルギー見通し(IRA_IIF.pdf (eia.gov))では、エネルギー関連のCO2排出量の削減量は、2030年までに2005年比で約3割前後にとどまると予測している。現時点では、2030年の削減目標の達成は厳しそうに見える。

<中国>

中国はGDP当たりとしているため、大きく削減しているように見えるが、2005年→2021年の間に名目GDPは6.4倍に増加しているため(その間日本は532兆円→557兆円と5%程度しか増えていない)、CO2の総排出量は大幅に増加しており、2023年現在も総排出量は未だ増え続けている。中国としては2030年のCO2排出量のピークアウトを目標として掲げており、最近の研究では2027年頃にピークアウトする可能性もあるとの情報も出てきているが、2021年の排出量124.7億トンは世界の排出量の33%を占め、ダントツの世界1位だ。(2位のアメリカは47.5億トンで12.6%, 日本は10.8億トンで2.9%)→ソース:EDGAR – The Emissions Database for Global Atmospheric Research (europa.eu)

<インド>

インドも中国と似ており、名目GDPはインドルピーベースで6.4倍(2005年→2021年)、実質GDPは2.7倍となっているため、GDPあたりのCO2排出量は減少しているように見えるが、排出量自体は約2.2倍(2005年→2021年)となっている。

<ロシア>

ロシアは、1990年が過去のピークで温室効果ガス排出量25.3億トン、その後7年間急減し、1997年の排出量は14.8億トンと1990年比で41.5%の削減となっている。(91年ソ連崩壊後の経済低迷が原因とされる)その後は排出量が増え続け2021年は17.6億トンに。1990年の一番のピークを基準とした緩い目標設定に見えるため、達成可能性が容易そうに見えたが、直近20年間は増加傾向にある点を考慮すると、2030年時点で目標を達成しているかどうかは定かでない。(少なくともこれ以上増やすことが出来ない)

<EU>

EUは2030年までに排出量削減率を少なくとも40%以上というのが当初の目標(合意事項)だったが、早期にこの目標を達成しそうになったため、2020年12月のEU首脳会議で目標を55%に引き上げた。排出量削減に熱心な国が多いため、最もうまくいっているように見える。削減の背景や要因は国によっても異なるが、概念の浸透率が高く不動産価格など至る所に実際に取り込まれ影響を与えていることが大きな背景としてあるのではないかと考えられる。

<日本>

日本の現状は環境省のこの資料000128749.pdf (env.go.jp)が分かりやすい。この資料の2枚目によれば、ネットの排出量は、このまま点線を伸ばしていけば2030年の△46%目標を達成し、2050年のネットゼロも達成できるかのようなグラフとなっている。日本は発電の問題が大きいため、資料9枚目で発電のエネルギーミックスの目標が記載されている。それによれば2021年現在では再エネ20.3%・原子力は6.9%だが、これを2030年には再エネ36-38%・原子力を20-22%程度に増加させることにより天然ガスを34.4%→20%、石炭を31%→19%まで減らす計画となっている。その他、電力消費量全体が1割程度減少すること(2021年→2030年)が見込まれているように読み取れる。日本は今のところ順調に見えるが、経済活動がどの程度活発化していくかや政治的にエネルギーミックスを達成できるか等、多くの不確実な要因は存在する。

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